中学までラグビーを続けてきた生徒が、私立高校でも競技を続けたいと考えるケースは少なくありません。
進学方法はさまざまですが、競技レベルの高い環境を求めるほど、家庭に求められる準備やサポートが増えるという現実があります。
そのため、進学前に費用面や生活面の変化を把握しておくことが、安心して競技に取り組むための大きな助けになります。
私立高校ラグビー部の費用負担とその実情
私立高校のラグビー部では、日々の練習だけでなく、部費や遠征費、スポーツ保険、送迎、合宿サポート、そして食費など、競技を続けるためのさまざまな負担が家庭に生じます。
こうした支出は学校ごとに差が大きく、強豪校ほど活動量が多いぶん費用も高くなる傾向があります。
進学を決めた時点では見えにくい「これらの負担」が、入部後に家庭を悩ませる理由のひとつになっています。
なかでも、「食トレ」と呼ばれる体づくりに関わる費用は家計に直結します。
ある強豪校では、新入部員に自宅での食事量や摂取バランスが細かく指示され、1回あたり2500kcalを目安に炭水化物とタンパク質を中心に摂ることが推奨されていました。
これは高校ラグビーの体づくりとして一般的に知られる取り組みですが、家庭側が常に栄養価の高い食材やプロテインを用意できるとは限りません。
食トレが家計に与える影響と体づくりの課題
強豪校の練習方針には段階的な育成が取り入れられており、入部後1年間は体重の増加を最優先し、筋力や瞬発力の強化は2年生以降に本格化します。
持久力は、日々の練習の積み重ねで身につけていくという考え方ですね。
しかし、このプロセスがすべての生徒に適しているとは限りません。
過去に、食トレや過度な練習量が要因となり、体調不良や疲労骨折で離脱するケースが報じられた時期もありました。
本人が望んで入部したとしても、体重が目標値に届かないとレギュラー争いで不利になるなど、精神的な負担も伴います。
また、「体が小さいと怪我につながる」という理由で増量を求められる場面もありますが、それぞれの生徒には適正な体格や成長速度があります。
競技の安全を重視する考え方そのものは理解できるものの、一律の基準で体づくりを求めると、結果的に生徒の将来に影響が出る可能性も否定できません。
こうした事情を踏まえると、食トレを実践するには家庭の理解と経済的なサポートが不可欠であり、そこに悩む保護者は決して少なくありません。
強豪校に進学した際の費用と生活の変化
私立高校の授業料には減免制度が広がりつつありますが、制服や教材費を含めると入学後の負担が大きくなる学校もあります。
さらに、部費や個人用具に加えて遠征費や合宿費が重なり、活動量の多い強豪校ほど費用が上がる傾向があります。
競技水準の高さは高校スポーツの魅力ですが、その一方で、大会実績が学校の評価として扱われ、生徒が期待以上の役割を背負う場面もあります。
休暇の多くが練習で埋まり、正月休みが数日だけという学校もある中で、生徒が高校生活を十分に楽しめているのかという点は考えておきたいところです。
こうした現実を知らないまま入部すると、費用や生活の変化に戸惑う家庭も少なくありません。
競技人口の減少には、こうした負担の大きさが影響していると感じています。
そこで、同じフィールド競技で全国規模の大会を持つサッカーと比較し、活動費の違いを整理してみます。
サッカー部とラグビー部の活動費を比べる
私立高校の運動部にかかる費用は、競技特性や学校の方針によって大きく異なります。
公開されているデータはサッカー部が多いため、まずはサッカー部を基準にし、そこにラグビー部の特徴を重ねる形で費用の目安をまとめています。
※ラグビー部の費用は、各校が公開する入部資料や公式サイトの情報から算出した目安です。
サッカー部の費用目安
- 年間活動費の目安:約12万〜30万円前後
- 初期費用(ユニフォーム・練習着・スパイクなど):約8万〜12万円程度
- 遠征・合宿費:学校や回数によって年間5万〜20万円以上
- 月々の部費・補食代:約5,500〜23,000円程度
- その他の個人負担(移動費・消耗品):数千円〜数万円
ラグビー部の費用目安
- 年間活動費の目安:約20万〜50万円前後
- 初期費用(保護具・練習着など):約10万〜15万円程度
- 遠征・合宿費:サッカーと同程度〜やや高め(年間5万〜25万円以上)
- 食トレ関連費(補食・食材・プロテイン):月数千円〜1万円以上/年間で5万〜15万円規模
- その他の個人負担(防寒具・消耗品・保険):数千円〜数万円
私立高校でラグビーを続けるために大切な視点
私立高校でラグビーを続ける選択には、魅力ある競技環境と同時に、家庭が担う負担が確かに存在します。
その背景には、学校ごとに異なる食トレや練習方針があり、生徒自身の努力だけでは補えない環境面の要素が影響しています。
だからこそ、進学や入部を検討する際には、学校の方針や必要な費用、生活面の変化を具体的に把握したうえで選択することが大切だと感じています。
こうした環境が整い、生徒が安心して競技に向き合える学校が増えていけば、ラグビーに挑戦する若い世代もさらに広がっていくはずです。


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