以前のインタビュー記事
「2つのプロチーム・3ヵ所で育成」
代表強化のための育成システム成功例として、イタリア代表を例に挙げていたエディーさん。
そのコメントを証明するかのように2024年のイタリア代表は、シックスネーションズをシニアだけでなくU20でも結果を残し、世界中のラグビーファンを驚かせました。
カプオッツォやガルビジなど、多くの主力選手は20代前半。
シックスネーションズ2024では、登録メンバー34人の総キャップ数597caps、平均年齢24.7歳、30歳を超える選手はアランやブレックスなど僅か3人。
私は、2018年頃からのフランス代表を思い出し、イタリア代表も強化と育成に成功していくのだと感じました。
イタリア代表の強化ピラミッド
イタリア代表は全員がプロ契約選手。
2024年1月に発表されたシックスネーションズ登録メンバーの割合は、ゼブレとベネトンに所属する選手が75%、フランス(TOP14)は18%、イングランド(プレミアシップ)は6%でした。
ゼブレとベネトンの2チームは、イタリア国内にクラブチームを構え、ユナイテッドラグビーに参戦する国際プロチーム。
スーパーラグビーに参戦していた、日本のプロチーム「サンウルブズ」と同じです。
Federazione Italiana Rugby(イタリア ラグビー協会) |
アマチュアからのステップアップ
アマチュア(ジュニア)選手が、プロ契約を勝ち取るまでの「ロードマップ」は、ニュージーランドのシステムに似ています。
日本では、ほぼ全ての高校生が大学進学を選び、卒業後の就職先としてプロ選手になるのが一般的です。
一方、イタリアの高校生は、学内の部活でプレーすることは無く、国内「U18」リーグにエントリーして経験を積んでいます。
現役代表スタンドオフのガルビジも、19歳になる2019年まではペトラルカ(U18リーグ)に在籍。
キアラン クローリーさん秘蔵っ子のメノンチェッロは、ASD RUGBY PAESE(U18)とパルマアカデミー(当時のセリエA)に出場し、19歳でパルマとプロ契約、翌年に代表デビューしました。
ガルビジと同様に、世代別代表で活躍する有望な選手は、U18から国内リーグを飛び級して国内外のプロチームと契約します。
ですが、そうでない多くの選手達は、イタリアラグビー連盟が主催する国内選手権に出場するため、アマチュアチームに登録して大学に通いながら、または働きながら練習と試合に参加しています。
それでは、イタリアラグビーのピラミッド形成を最上位から説明していきます。
注意!
2023-24シーズンから、リーグの名称だけでなく、フォーマット改変もされましたので、正確な情報では無い可能性があります。
イタリア代表
イタリアラグビー連盟に所属する選手が目指す最高位です。
海外のクラブチームに在籍している選手は、招集する登録メンバーに人数制限を設けていましたが、2022年頃に廃止されたようです(恐らく)?
2019年:6N’s直後(14位)ワールドカップ直後(12位)
2020年:12位から14位の間を推移
2021年:14位付近を維持
2022年:年末に12位まで上昇
2023年:10月に11位に到達
2024年2月には、フランスとの引き分けで10位に上がりました。
(2013年以来初のトップ10入り)
国際プロチーム
イタリア代表に選ばれる半数以上の選手は、この2チームに在籍。
アイルランドや南アフリカの強豪チームと対戦できるだけでなく、欧州カップ戦にも出場できるため代表強化には欠かせない存在です。
また、海外の未代表選手も多く在籍しているので、将来のイタリア代表候補を確保する重要なチームでもあります。
ベネトン
設 立:1932年
本拠地:トレヴィーゾ
ホームスタジアム:スタディオ・コムナーレ(約5,000人収容)
2009-10シーズンまでは、国内リーグ「TOP10」に在籍していましたが、完全プロ化に伴いリーグを脱退して旧Pro12(現ユナイテッド)に移籍。
セブレ・パルマ
創 設:1973年(プロチーム発足は2012年)
本拠地:パルマ
ホームスタジアム:セルジオ・ランフランキ(約5,000人収容)
2012年、イタリアラグビー協会からの経済支援を受け、代表強化を目的とする完全プロ化のチームに変わりました。
同年8月から旧Pro12(現ユナイテッド)に移籍。
イタリア国内リーグ セリエ A エリート
イタリア国内ラグビー選手権1部(国内最上位・トップリーグ)
半数はアマチュア選手で構成されていますが、出場給や歩合などの報酬が支払われます。
外国出身選手や国内外の元代表、7人制選手も在籍しています。
チーム数:9チーム
試合数:リーグ戦16試合
プレーオフ:上位6チーム(2グループに分かれて)総当たり戦
決勝戦:各グループ1位による対戦
降 格:最下位はセリエAに自動降格
※以前の名称は「TOP10」でした。
※リーグ改変のため2023-24シーズンは、8位と9位が自動降格。
※2024-25シーズンから、チーム数は「9」→「10」に変更されます。
セリエA エリートカップ
エリートに参戦するチームの若手選手が出場できる、育成を目的としたカップ戦。
参加するチームは毎年変更され、1月から5月末までの間に1回総当たり戦が行われる。
イタリア国内リーグ セリエ A
イタリア国内ラグビー選手権2部(下部リーグ)
エリートの傘下チームも複数あり、双方のリーグに出場する選手も多くいます。
ジョージアやアルゼンチンの未代表選手も多く、メディカルジョーカーなど短期契約している選手もいます。
チーム数:36チーム(12チームが3グループに分かれる)
試合数:リーグ戦22試合
昇 格:各グループ1位と勝ち点で選ばれた2位の1チームによる決勝ラウンド。優勝チームはセリエAエリートに自動昇格。
降 格:各グループ12位の3チームによる総当たり戦。最下位はセリエBに自動降格。
※2024-25シーズンから、チーム数は「36」→「40」に変更されます。
イタリア国内リーグ セリエ B
イタリア国内ラグビー選手権3部(下部リーグ)
大半はイタリア国籍の選手で構成され、ベネトンやパルマのアカデミーやU18リーグとリンクしているチームもあります。
チーム数:48チーム(12チームが4グループに分かれる)
試合数:リーグ戦22試合
昇 格:各グループ1位はセリエAに自動昇格。
降 格:各グループ最下位はプレーオフを行い、優勝チームを除く3チームがセリエCに降格。
イタリア国内リーグ セリエ C
イタリア国内における4部リーグ(下部リーグ)
地域リーグでもあり、イタリアラグビーの発展と選手育成の場として運営。
チーム数や試合数に限定は無く、セリエBに昇格するためのプレーオフのみ公式記録として残されている。
以前は毎年8チームが昇格できたが、2023-24シーズンのリーグ改変により、セリエBに必要なチーム数を補うために昇格数が決められる。
登録選手の確保ができなかったり、経済的理由(遠征費用の捻出)などから、セリエCに自主降格することもあります。
イタリア国内 U18リーグ
19歳になるシーズンまで在籍可能、イタリア代表資格が無くても出場できる。
チーム数:20チーム(10チームが2グループに分かれる)
試合数:リーグ戦18試合
プレーオフ:各グループ上位2チームによる決勝トーナメント
日本のラグビー育成とは違う
国際リーグに参加するプロチーム、そして国内トップリーグと下部リーグが存在するイタリアのラグビー組織。
サンウルブズは消滅しましたが、2019年頃までの日本と同じように感じませんでしたか?
「イタリア」と「日本」は、ランキングも常に近い位置にあり、競技人口もイタリア約9万6千人、日本は9万5千人。
遠い国のライバルでもあります。
しかし、大きく違うのは?
プロを目指す「アマチュア選手の人数」です。
日本では、卒業後の進路にプロ契約が叶わなかった生徒は、社会人チームのある会社に就職してラグビーを続けるしか道はありません。
ですが、ディビジョン3や地域のクラブチームでは、活動期間の短さ、試合数や練習量の少なさから「プロを目指すための場」として物足りなさを痛感します。
これでは、上位カテゴリ(スカウト)の目に留まる事も難しいですよね!
一方のイタリアは、3部のセリエBにも「U20」ジュニア選手や、20代前半の若手選手が多くプレーしています。
お分かりだと思いますが、セリエBまでの国内チーム数は「93」もあり、どのカテゴリでプレーしてもプロを目指すための練習と試合に出場することができます。
上位カテゴリのチームは、常に才能ある選手の発掘ができる環境にあり、「国内リーグ活性化」「代表強化」に繋がっているのです。
日本のメディアには取り上げられることの無い「イタリア国内リーグ」。
強化のための「育成プロモーション」について、少しは知って分かりましたでしょうか?
日本代表との対戦も楽しみですが、次回W杯では大躍進が期待できそうな予感!
これからの「イタリア代表」に注目しましょう!
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