Mitre 10 Cup(マイター10 カップ)とは、ニュージーランドで最もレベルの高い国内ラグビーリーグです。
一番上のリーグって「スーパーラグビー」じゃないの?
って思っている方も多いと思いますが、スーパーラグビーは国際プロリーグとしての位置付け。
マイター10は「ニュージーランド国内プロリーグ」なのです。
Mitre 10 Cupとは?ニュージーランド国内ラグビーリーグの全貌
- 1976 – 1984 National Provincial Championship
- 1985 – 2005 National Provincial Championship
- 2006 – 2009 Air New Zealand Cup
- 2010 – 2015 ITM Cup
- 2016 – 2020 Mitre 10 Cup
現在リーグに参加している多くのチームは、1800年代後半に設立された歴史あるクラブです。
リーグ発足前には、各チームが対抗戦を行い、1904年に始まった「盾」を賭けたタイトルマッチ、ランファーリーシールド(Ranfurly Shield)の防衛戦などで競技を盛り上げていました。
ニュージーランドラグビーで耳にする「NPC」とは2005年までの選手権タイトル(National Provincial Championship)の頭文字です。
日本では「全国州選手権大会」「州代表」と呼ぶ人もいますが、リーグの名称はメインスポンサーが変わるごとに変更されます。
- Air New Zealand Cup = ニュージーランド航空
- ITM Cup = Independent Timber Merchants(建築資材管理組合)
- Mitre 10 Cup = マイター10(ホームセンター)
日本のプロ野球オールスター戦と同じだと思ってください。
・2006年まで「サンヨーオールスターゲーム」
・2007年まで「ガリバーオールスターゲーム」
・2016年まで「マツダオールスターゲーム」
・2017年以降「マイナビオールスターゲーム」
「マイター10」のスポンサー契約は5年間と言われているので、2021年からはリーグ名称が変わると思います。
2021年からは、オーストラリアのホームセンター「バニングスウェアハウス」がリーグスポンサーに決まりました。
Mitre 10 Cup 出場チームを紹介
トップリーグ(日本)でプレーする多くのニュージーランド出身選手は、下記の14チームに在籍していたと思います。
- 上位リーグ「Premiership」(7チーム)
- 下位リーグ「Championship」(7チーム)
前年度の上位7チームが「Premiership」に、下位7チームは「Championship」で試合することになります。
参考までに下記は、2020年のディビジョン振分です。
前年シーズン(2019年)の成績を基に、下部ディビジョン1位となったノースハーバーが上位ディビジョンに昇格し、最下位だったホークスベイは入れ替わりで下部ディビジョンに降格しました。
Premiership Division
- オークランド ラグビーユニオン(前年度優勝)
- タスマン ラグビーユニオン
- ベイ・オブ・プレンティー ラグビーユニオン
- ワイカト ラグビーユニオン
- カンタベリー ラグビーフットボールユニオン
- ウェリントン ラグビーフットボールユニオン
- ノースハーバー ラグビーユニオン(Championship優勝し昇格)
Championship Division
- ホークスベイ ラグビーユニオン(Premiershipから降格)
- オタゴ ラグビーフットボールユニオン
- ノースランド ラグビーユニオン
- タラナキ ラグビーフットボールユニオン
- ラグビー サウスランド
- カウンティース・マヌカウ ラグビーフットボールユニオン
- マナワツ ラグビーユニオン(前年度の最下位)
Mitre 10 Cup 大会形式を解説
Mitre 10 Cupの開催期間と試合数
スコッドはスーパーラグビーの全日程終了後、7月中旬に発表されます。
大会期間は8月中旬から10月下旬まで、各チームは合計10試合を戦います。
リーグ戦は9週間で行われるため、1週間に2試合の対戦が組まれる週が必ずあります。
また、「Premiership」と「Championship」のチーム間で交流戦も実施されます。
プレーオフと昇格・降格システムを解説
Premiership Division
リーグ戦終了後、上位4チームによるノックアウト方式のトーナメントが行われ、その勝者が年間チャンピオンとなります。
一方、最下位のチームは翌年「Championship」へ降格します。
Championship Division
リーグ戦終了後、上位4チームによるノックアウト方式のトーナメントが行われ、その勝者が、翌年「Premiership」へ昇格します。
ニュージーランドラグビーの階層と位置付け
一般的には、地域のクラブチームで活躍すると州代表に選ばれ、州代表で活躍すればスーパーラグビーチームと契約、そして頂点は誰もが憧れるオールブラックスです。
学生ラグビーもクラブラグビーと同じ位置付けとされていますので、在学中に州代表までステップアップする選手も多くいます。
スーパーラグビーは国際プロリーグの組織に属するので、州代表で行われる試合が国内最上位リーグとなります。
選手の移籍事情と試合出場の仕組み
4ヶ国対抗戦(ニュージーランド代表)に出場する選手や、日本のチームと契約している選手等を除き、スーパーラグビーに出場している多くの選手が所属しています。
もちろん、代表戦が無ければ現役代表選手も出場していますし、代表戦に出場する23人から外れた選手が州代表に急遽出場したりするケースもあります。
そして、14チームは州代表なので傘下のクラブチームから招集されたノンプロ選手もたくさんいます。
試合に出場すると、出場給が支払われます。
学生であっても、アマチュアであっても、ここで活躍できれば、スーパーラグビーのトレーニングスコッドに入ることも可能です。
地元のチームに所属するの?
新人や若手選手の多くは地元のチームに在籍しますが、特に決まりはないので前チームとの契約が切れていれば、自由に移籍できます。
北島vs南島 オールスター戦の歴史と現在
余談ですが・・・
1897年から2012年まで、「北島vs南島」の対戦が行われていました。
選手のチーム分けは、その年に在籍していたクラブチームでは無く、初めてプロ契約したチームからの選出となります。
例えば?
最初にプロ契約を結んだチームがノースランド(北島)の場合、その後タスマン(南島)に移籍したとしても、必ず北島チームとして出場する決まりになっています。
もちろん!
ニュージーランド人だけが出場できる試合では無く、海外出身の選手が州代表のチームと契約すれば出場資格は与えられます。
ですが・・・!
試合の目的はオールスター戦の要素を持ちながらも、NZ代表のセレクションマッチ(選考試合)となるため、出場資格はあってもニュージーランド代表資格が無ければ選ばれないと思います・・・(多分)
2012年は、財政危機に陥ったオタゴ ラグビー協会の資金集めを目的に開催。
しかし、2013年以降はスーパーラグビーの過密日程や、対抗戦の日数が増える等の理由から開催はありません。
戦績は?
圧倒的に北島が有利なチーム編成なので、過去の対戦成績は、80試合(北島50勝・南島27勝・3分)です。
今やれば、恐らく南島の方が強いと思うのですが・・・
北 島
ノースランド、ノースハーバー、オークランド、マヌカウ、ワイカト、ベイ・オブ・プレンティー、タラナキ、ホークスベイ、マナワツ、ウェリントン
南 島
タスマン、カンタベリー、オタゴ、サウスランド
日本でプレーする Mitre 10 出身のニュージーランド選手たち
留学生として日本の大学を卒業しトップリーガーになった選手を除くと、ほとんどのニュージーランド出身選手は州代表チームに所属していたと思います。
神戸製鋼のアンドリュー エリスとダン カーターはカンタベリー出身、ヘイデン パーカーはオタゴ出身、マイケル リトルはノースハーバーと切りがないので・・・
2006年リチャード カフィ(元東芝)、2009年マイク デラニー(元パナソニック)、2013年アンドリュー エリス(元神戸製鋼)はシーズン最優秀選手に選ばれています。
Mitre 10 Cupでプレーする選手の年俸や待遇
2019年時点では、サラリーキャップ制度(上限は約4,500万円)です。
年俸補償は約162万円から386万円と決め、現役学生や短期スポット出場した選手にも162万円は補償されます。
代表でチームを離れる選手は年俸がカットされますが、ラグビー協会からインセンティブ制度による報酬を手に入れることができます。
Mitre 10 Cupを支える傘下クラブチームの魅力
日本とは比べ物にならない位のチーム数が存在します。
全てがアマチュアチームで、セブンズや女子チームも含めると1チーム当たり100を超す傘下チームがあります。
(プロ契約している選手もいます)
スーパーラグビー(SR)を目指すには、シニアのカテゴリからランクアップしていく必要があります。
例えば?
日本の大学を卒業後にスーパーラグビー(SR)を目指すなら、「シニア」のカテゴリでプレーすることが最低条件となります。
「シニア3」→「シニア2」→「シニア1」→「シニアP」→「州代表」→「SR」
- 数字はランク(レベル)とお考え下さい。
- シニア3以降のクラスも沢山あります。
- Pはプレミア、そのカテゴリの最上位を意味します。
シニア以外のカテゴリも選べます
体格差による怪我を防ぐための85kg以下(Under 85kg rugby)や、健康を目的とした週末ラグビーやジュニアチーム、シニア未満(U16、U19、U21)、40代以上(O40、O50、O60)等のカテゴリがあり、それぞれに「●●3」→「●●2」→「●●1」→「●●P」とランク分けがあります。
例えば、高校生の多くはU16のカテゴリに入り、「U16_3」→「U16_2」→「U16_1」→「U16_P」とランクアップを目指します。
練習や試合も同じカテゴリの同じランクに所属する選手と行われるので、怪我を防ぎ互角の試合を行うことができるのです。
ニュージーランドラグビー最大の魅力は、年齢や体格と自分の実力にあったカテゴリを選択し、練習や試合に出場できるので「体格が小さいから危ない」とか「レベルが低いから試合に出れない」などを理由に辞める人が少ないのです。
同レベルの選手と、練習や試合ができる。
これが重要ポイントです。
「学生ラグビーは、レギュラーにならないと大会に出場できない」日本とは大きく違いますよね!
クラブチームの活動期間は学内クラブを除き、1月下旬か遅くても2月上旬には練習が始まり、3月下旬から8月上旬までが1シーズンとなります。
説明が分かりにくくてスミマセン・・・(涙)
スーパーラグビーとの関係性は?
完全な傘下ではありませんが、ノースランドを例に挙げるとノンプロ選手に対しては、ブルーズ以外のチームは直接交渉できない決まりがあります。
2006年に設立したタスマンを除けば、「州代表チーム」は「スーパーラグビー」チームの傘下ではないが、リンクしていると言えるのではないでしょうか。
スーパーラグビー | 州代表チーム |
---|---|
クルセイダーズ | カンタベリー |
ブルーズ | オークランド |
ノース・ハーバー | |
ノースランド | |
チーフス | カウンティース・マヌカウ |
タラナキ | |
ベイ・オブ・プレンティー | |
ワイカト | |
ハリケーンズ | ウェリントン |
ホークスベイ | |
マナワツ | |
ハイランダーズ | オタゴ |
サウスランド |
日本人選手も挑戦可能!Mitre 10 Cup への道
日本人で州代表に選ばれた選手は11名います。(2019年時点)
2019年は、トップリーガー3選手が州代表チームと契約し試合に出場しました。
- 内田啓介(タスマン)
- 瀧澤直(マナワツ)
- 立川理道(オタゴ)
少し過去には、2012年に田中史朗と堀江翔太(オタゴ)、2015年は茂野海人(オークランド)が、傘下のシニアチームから挑戦し、見事スコッド入りを果たしています。
ここで思うのは、
「6人ともトップリーグに在籍しているから挑戦できたと」思っていませんでしょうか?
面倒な手続きなどは、所属する日本のクラブチームがサポートしたと思います。
2012年オタゴに挑戦した2人は、元チームメイトで当時オタゴのHCに就任したばかりのトニー ブラウン氏の推薦があったと報じられましたが、スコッドに入れるかは実力が全てです。
堀江選手はパナソニック入部前の2008年にニュージーランドに渡り、州代表(カンタベリー)を目指しましたがスコッド入りは叶いませんでした。
当時のチームメイトには、ニュージーランド代表のサム・ホワイトロックがいました。
なので、やる気さえあれば!
みなさんも「州代表に挑戦する」ことは可能なのです。
実は・・・
傘下のクラブチームには、誰でも入ることができます。
その方法は?
以前は、練習グランドに行き「チーム練習に参加したい」と伝えれば一緒に練習ができ、プレーが認められれば試合に出場することもできました。
(現在は多分無理だと思います)
恐らく外国人の参加は、ID提示やスポーツ保険の加入など一定の条件をクリアしないと参加できないチームが多いみたいです。
なので!
真剣に参加を考えている人は、チーム練習が開始される1月までに州代表か傘下チームに連絡しましょう。
(チームのHPやFBからでも可能だと思います)
ただし、全ては英語です。
在学中であれば英語の先生にお願いして、連絡や登録を手伝ってもらいましょう。
ちなみに、エントリーするカテゴリとランクは自己申告です。
高校在学中に行くなら「U18」、高校卒業後なら「U19」や「U21」などがあり、州代表に一番近い「シニア」で練習したい人は「シニア_3」か更に下のランクから始めた方が無難だと思います。
自分のレベルより低いクラスから開始しても、プレーを見てレベルが合っていないと判断されれば、直ぐに上のクラスに推薦してもらえます。
もちろん、下のランクに下げられることもありますが、それは怪我を防いだり練習についていけない落ちこぼれにならない配慮だと思ってください。
ちなみに、州代表直下の「シニア_P(プレミア)」はコーチの推薦がないと入れません。
「カテゴリ」や「ランク」のレベルは、実際に見ないと分からないのが辛いところですね・・・
チームに合流し練習と試合を重ねランクを上げていけば、田中選手や堀江選手、茂野選手と同じ州代表直下のプレミアチームでプレーすることができます。
そこでも活躍することができれば、晴れて州代表プレーヤーとなりマイター10に出場できます。
そして、その先はスーパーラグビー・・・
2012年オタゴで活躍した田中選手は、ハイランダーズと契約し、翌年2月にスーパーラグビーデビューを果たしました。
堀江選手は日本人特別枠を採用したオーストラリアのレベルズと契約し、田中選手と同じ日にデビューしています。
以上が私の知るニュージーランドラグビーです。
古い記憶や、ニュージーランドの知人に聞いた曖昧な情報も混じっていますので、あくまで参考程度に読み終えてください。
オールブラックス選手に出会えるチャンス
現役の代表選手は、年明けからスーパーラグビーのチームに参加し、シーズン終了後には対抗戦やテストマッチに向けて代表チームに合流するため、直接会える機会はほとんどありません。
しかし、ケガからの復帰を目指して調整中の選手や、代表を引退してヨーロッパのクラブチームに所属している有名選手が、稀にシニアの練習に参加することがあります。
もちろん、あなたがそのチームに在籍していれば、一緒に練習や試合でプレーすることも可能です!
狙い目は?
ヨーロッパのチームが合宿を開始する少し前(7月初旬)の時期です。
さらに、未代表の若手選手はスーパーラグビーのシーズン終了後に、州代表のスコッド入りを目指して続々とチーム練習に参加してきます。
私の知り合いは、2012年頃にサウスブリッジで、当時クルセイダースに所属していた、あのダン カーターと一緒に練習をしました。
Mitre 10 Cup まとめ:ニュージーランドラグビーの魅力と未来
田中史朗選手は、2012シーズンの開幕メンバー(オタゴ)に入りました。
各チームのスコッドは35人弱、その中にスーパーラグビーの主力選手も入ってきます。
当然スコッドに入るには狭き門ですが、選ばれれば地元の英雄として扱われます。
茂野選手は、オークランド傘下のシニア(プレミア)チームであるポンソンビーRFCに所属し、その活躍が評価されてオークランドの短期召集スコッドに選出されました。
さらに、開幕の40日前には正式にスコッド入りを果たしました。
その年オークランドはプレミアシップの2位に入り、プレーオフ決勝(vs カンタベリー)ではスタメン出場。
チームメイトには、ビンス アソ、ベン ラム、アキラ イオアネ等そうそうたる名前が!
惜しくも決勝戦は25–23で敗れましたが、茂野選手はオークランドで一番有名な日本人ラガーマンです。
そして、2019年にタスマンでプレーした内田啓介選手は、チームの中心選手として決勝戦に出場。
日本人初の優勝メンバーの一員になりました。
コメント